2020年の東京オリンピックを前に、にわかに賑わいだしたサーフィン業界。
そんな中、WSL(World Surf Legue)のWCT(World Championship Tour)、いわゆる世界最高峰のプロサーフィン大会で、日本人である「カノア五十嵐」が優勝を果たすという快挙(ホントに快挙です)を成し遂げた。
ところが、サーフィンをやらない人にとっては、「世界最高峰って何なの?」ですし、サーファーでもスラスラと答えられない人は多いのではないでしょうか?
そこで今回は、一般的にはあまり知られていない、サーフィンの大会について分かり易く解説します。(ショートボードのカテゴリーで話しを進めます)
世界最高峰のプロサーフィン大会
車のレースの世界で言うと「F1」(エフワン)みたいなカテゴリーのことです。
サーフボードと己の肉体で波に臨み、勝つことで得たポイントを積み重ねた上位選手のみがエントリーできるという狭き門。バリ島や南アフリカ、カリフォルニア、そして、一般の人がサーフィンと言うとイメージする大波でのチューブライディング、ハワイのパイプラインなど、サーフィンのメッカ11ヵ所を1年間で転戦し世界チャンピオンを決めるのです。
そして、そんな世界最高峰の試合で日本人サーファーが優勝したのです。驚きです!ましてや新聞にも載るなんて(涙)
では、世界最高峰の大会への出場チケットを獲得するまでの道のりを説明します。
プロサーファー
プロ野球やサッカーなどは、チームと契約した時点からプロとみなされますが、サーフィンについては、ゴルフやボクシングと同様「資格」となります。
日本のサーフィン界においては、二つの組織が存在します。
- JPSA(一般財団法人 日本プロサーフィン連盟 )・・・国内中心
- WSL JAPAN・・・世界組織の日本支社
JPSAに登録されている者で、日本各地で開催される大会において一定の成績を上げ、プロ認定を受けた者(資格取得者)がプロと呼ばれます。
そしてエントリー費を払い大会に出て、勝つことで賞金を貰うシステムです。
ちなみに日本のサーフィン人口は、100万人超と言われてますが、そのうちショートボードで言うと男子プロが約160名、女子が約60名だそうです。
JPSAの大会が、年間7戦各地で行われ、選手は2万~3万のエントリー費を払い大会に出場します。ところが、一つの大会の優勝総額が120万前後なので、勝ったとしてもゴルフなどに比べると実入りはとても少ないのです。なので、切磋琢磨し大会に勝ち、ポイントと、自分を売り込みスポンサーを獲得するという涙ぐましい努力が必要となるのです。
こうして、お金を貯めQSの大会にエントリーし、勝つことでポイントランキングのアップをはかるのです。
WQS(通称「QS」)
WSL(旧ASP)は世界のプロサーファーを統括している組織となり、世界最高峰の大会とはここが主催するWCT(World Championship Tour)、通称CTとなります。
ところがCTに出場できる選手はごくわずか、その前に予選リーグと呼ばれるWQS(World Qualifying Series)、通称QSに出場し、勝つことでポイントランキングを上げCT出場のチケットを掴み取る必要があります。
そのCTへのチケットは、
- メンズでQSランキングトップ10
- ウィメンズはQSランキングトップ6
で、シーズンを終えることで、出場資格を掴みとれます。
このQS、実は、エントリー費さえ払えれば出場資格が得れるようです。
QSの試合は、世界各地(もちろん日本でも)で行われ、イベントによってグレードが異なります。
- メンズ QS1000、QS1500、QS3000、QS6000、QS10000
- ウィメンズ QS1000、QS1500、QS3000、QS6000
この数字が、優勝した時の獲得ポイントとなります。
「よし、ならば10000とか6000の試合でガッツりポイントを稼ごう」となりますが、当然同じことをみんな考えグレードが高くなるほど、出場するサーファーのレベルは高くなります。QSに参戦するサーファーは世界に何千人といるようなのでかなりの競争率です。
日本においてサーフィンはまだまだ社会的にも知名度が低く、莫大な資金を提供してくれるスポンサーもおらず、お金持ちのプロなら別ですが、遠征費やコーチング費用、エントリー費を捻出しQSにがっつり参加するのはなかなか難しいのが現実です。(ちなみにカノアは、「Visaデビットカード」のCMに出てますね)
WCT(通称「CT」)
さて、いよいよ世界最高峰の「ワールドチャンピオンツアー」出場権についてです。
メンズが世界のトップ34、ウイメンズが世界のトップ17が出場できるという狭き門。
詳しく見ますと
メンズ
- 前年のWCTランクのトップ22名
- WQSランクのトップ10名
- WSL選出枠2名 の合計34名
ウィメンズ
- 前年のWCTランクのトップ10名
- WQSランクのトップ6名
- WSL選出枠1名 の合計17名
WSL選手枠とは、ワイルドカード(特別枠)と呼ばれ、イベントスポンサーの推薦サーファーであったり、開催地地元のトライアルイベントを勝ち上がったサーファーであったりとイベント毎に異なります。また、怪我によりイベントを欠場するWCTサーファーがいる場合、WSLが、前年のWCTランクやWQSランクを加味し、替わりのサーファーとして選出します。
ちなみに2年前にアップした画像ですが、一番左がカノア五十嵐です。ケリースレーターを筆頭に世界のトッププロがこんなに目を輝かせて波を見る姿。感動ものです!
まとめ
実際には細かい規定が諸々ありますが、簡単に説明すると上記のようになります。
なんとなく、構図が理解できたのではないでしょうか。
しかし、こうしてみると、日本人がCTに出場するだけでも大変なことですが、ましてや優勝となるとまさに快挙の一言です。ましてや、WCTワールドチャンピオンにも輝いたら涙物です!
しかし、この狭きシステムにおいて、11回ものワールドチャンプに輝いたケリー・スレーターは、まさにレジェンドですね。